「海のはじまり」第3話:弥生に疎外感は必要?

海のはじまり

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「海のはじまり」第3話の記事後半では、物語から、生きるヒントを拾っていきたいと思います。

 疎外感は悪ではない

弥生にとっての疎外感の意味は?

3話では、疎外感がテーマになる中、特に、弥生の疎外感が多く描かれました。
しかし、弥生は努力しています。海ちゃんの母親になろうと、子育ての本を読んで勉強しようとしている。
もし、疎外感がなかったら…?
そうした努力をしないで、私母親やれてる!と浮かれて、海ちゃんの気持ちに気づかないでただ楽しく過ごしてしまうかもしれません。
弥生は自分で努力し、居場所を作れる人。この疎外感も必要な試練です。
疎外感は、決して悪なだけではありません。
さらに、海ちゃんが弥生のハンカチを素通りして、夏くんに抱きついたシーン。弥生の外野感が目立つシーンではあったのですが、夏はここで、「悲しいものを悲しいって、吐き出さないと」とメッセージを送っていますよね。これは弥生にも刺さっているのではないでしょうか。中絶した辛い過去を胸にしまっている、弥生。大丈夫と言って、泣きたいのに泣けていないのかもしれません。弥生が本当にケアすべきなのは、海ちゃんの前に自分です。見ぬふりをしていた心の傷に、絆創膏を貼ってあげる。疎外感が、そんなきっかけになってくれたらなと思います。

津野くんは疎外感に背中を押してもらおう

うみちゃんが会いに来てくれたことなんてない、ただシフトの調整をしたり、保育園にお迎えに行っただけの関係だ、と寂しそうに言う津野くん。
津野くんは弥生と違って、これから新しい恋人と出会い、新しい家庭を築く可能性があります。いつまでも海ちゃんに関わり続けることで、津野くんの新しいパートナーは複雑な気持ちになるかもしれません。徐々に、海ちゃんから卒業していく必要があります。津野くんが幸せになるためにも、この疎外感は必要なことといえます。

イライラしていることを、きちんと説明できる大人

図書館に来た夏に、津野は、皮肉っほい言い方を繰り返し、夏にすみませんと何度も言われ、いじめてる気になるので謝らないでと伝えるほどでした。そんな津野が突然、「すみません感じ悪くて。」と謝ります。「そちらもそうだと思いますけど、まだ感情がぐちゃぐちゃで、別に怒ってないんですけど、イライラした感じになっちゃって。」と説明します。

今までのコントのようなやり取りは、こういうことだったのかと、ここで腑に落ちるのです。人間誰しも完璧ではありません。特に、大切な人を失った直後、イライラを制御できなくなるのは珍しいことではないでしょう。しかし、だからといってイライラを誰にでもぶつけていいわけではありません。津野は、自分がぐちゃぐちゃであり、イライラしてしまうことを、きちんと夏に伝え謝りました。この一言があるかないかで、イライラされた側の人間の心持ちがかなり変わってきます。きちんと説明して謝ることは、難しいことです。それができる津野さんは、かっこいい大人だなと思います。

 

一方、朱音も、水希の代わりに弥生が海ちゃんといるもやもやを、弥生にぶつけてしまいました。気持ちはとても分かりますが、弥生もダメージをくらっています。

その後、海ちゃんを夏の家に連れてきた際、朱音は、「この前のあれ、気にしないで。ちょっと、いろいろ思い出してて、わーっとなってて。大人だってまだダメでしょ。思い出すと、気持ちがぐちゃぐちゃするでしょ」と説明します。弥生を嫌っているわけではないのかと、夏もほっとしたことでしょう。

その後海ちゃんを迎えに来た際に、「良かったら」と、朱音が弥生にケーキを差し出します。
「2人の時間奪っちゃってるでしょ、2人で食べて」との気遣いでした。
弥生が嬉しそうな顔になり、見ている方も嬉しくなります。朱音も不器用で、正面から弥生には謝れないけれど、気持ちは伝わってきます。

言葉にして説明すること、それが難しければ、できる方法で伝えることの大切さを感じました。

知人の子が、まだ3歳くらいだったとき、

「ママごめんね。ちょっとイライラしちゃったの。」と謝る姿を見てびっくりしたことがあります。自分がイライラしていたと自覚していたこと、それを伝えられることの両方に驚きました。きっと、知人が娘にいつも、ちゃんと説明して謝る姿を見せているのでしょう。

親としてもそうですし、まわりとの人間関係において、見習いたいなと思ったものでした。

子どもには、「パパ」役が必要

夏くんはいつパパになるのか?

これは、もうなっている、と思います。
生物学的にはもちろん、受精した瞬間からパパですし。
水希が、夏くんの存在を海ちゃんに教えたときから、夏くんはもう水希の中でパパでした。
海ちゃんの言うとおり、パパはやるものじゃなくて、いるものですよね。
どんなに酷い父親でも、離れていても、パパはパパ。子どもは、パパに愛して欲しいと願います。
海ちゃんが夏くんのことを知っている以上、もうパパになってしまっているので、パパをやらないという選択肢は、夏くんにはなかったとも言えるでしょう。
夏くんも、海ちゃんのパパだという自覚はあるはずです。
では、夏くんも疑問に思った、パパやるって何?何をしたらパパをやるってことなのか?
これは、朱音が夏に言った言葉ですよね。海の父親やる気はあるかと。
朱音が言う「父親やる」ということは、一緒に暮らし、責任を持って、経済的精神的に支えていくという意味でしょう。
これは、生半可な覚悟ではできないし、やりきれない人もたくさんいます。
しかし、子どもの成長にとっては、父親役は必要不可欠です。本当の父親でなくても、誰かが父親役をやらなければいけない。
やりたくないからやらないでいると、子どもの命が失われ、虐待として逮捕されるわけです。
現在では、朱音夫妻が経済的・精神的に支えており、仮の父親役を果たしています。しかし、朱音も70代。この先長くありません。
そんな状況で、夏に父親をやらないという選択肢はないでしょう。
選択というものは、自分一人だけのものではないということですね。

あらゆる可能性を考えろ

水希は、夏の選択肢を広げたのか?

水希は、夏の選択肢を広げたのか?
水希が一人で産む決断をしたことで夏が失ったものは、夏が水希と海ちゃんと過ごす時間。得られたものは、今後も支えていってくれそうな、弥生という存在。水希は、夏の選択肢を広げたわけではなく、夏は結局パパになるというところに戻ってくるわけですが、そこに弥生がいるかいないかが大きな違いです。最終的に、弥生を交えた幸せな家族の形になるのであれば、水希の選択も間違いではなかったということでしょうか。
選択肢を奪わない、という水希の選択は、あくまで水希の希望であり、夏の希望ではありませんでした。夏の手持ちのカードの中には、父親になるというカードは入っておらず、選ぶことができませんでした。あらゆる可能性を考えろという水希の言葉を守っていたら、夏もこんなシークレット選択肢の存在にも気づくことができたのでしょうか…?
相手が選択肢を閉じたからといって、自分にその選択肢がないわけではない、ということは肝に銘じておこうと思います。

まとめ

🔶第3話に散らばる、生きるヒント🔶

①疎外感は味方になることもある
②イライラをきちんと説明できる大人になろう
③ 子どもには、「パパ」役が必要
④あらゆる可能性を考えろ
 
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