ドラマ『ライオンの隠れ家』第6話では、主人公・洸人(柳楽優弥)の姉・橘愛生(あおい・尾野真千子)が夫のDVから逃げるため、Xこと柚留木(岡山天音)が、愛生の「偽装死」を計画していたことが判明しました。
洸人は「偽装死」は犯罪ではないかと心配していましたが、この行為は法的にどのような問題があるのでしょうか。
偽装死そのものは犯罪か?
日本の法律では、自分の死を装う行為自体を直接的に罰する規定はありません。
つまり、偽装死そのものは直ちに犯罪とはなりません。
しかし、偽装死に関連して他の犯罪行為が行われた場合は、法的な問題が生じます。
偽装死に関連する可能性のある犯罪
- 詐欺罪(刑法第246条): 偽装死を利用して生命保険金を不正に受け取る行為は、詐欺罪に該当します。保険会社をだましてお金を得る行為であり、重大な犯罪とされています。
- 公正証書原本不実記載罪(刑法第157条): 偽装死のために虚偽の死亡届を提出し、戸籍や住民票に虚偽の情報を記載させる行為は、公正証書原本不実記載罪に該当します。公的な文書に虚偽の情報を載せる行為として処罰の対象となります。
- 偽造罪(刑法第155条): 偽装死の過程で、他人の身分証明書や公文書を偽造・変造する行為は、偽造罪に該当します。これらの行為は公的な秩序を乱すものとして厳しく処罰されます。
愛生(あおい)の偽装死における問題点
ドラマ内で、愛生は橋の上から、自殺を装って姿を消しました。
この行為自体は直接的な犯罪とは言えませんが、以下の点で法的な問題が生じる可能性があります。
- 虚偽の死亡届の提出: 愛生が死亡したと信じた家族や関係者が死亡届を提出した場合、結果的に公的な文書に虚偽の情報が記載されることになります。これにより、公正証書原本不実記載罪が成立する可能性があります。
- 保険金詐欺の可能性: 愛生の死亡を信じた家族が生命保険金を請求し、受け取った場合、詐欺罪が成立する可能性があります。たとえ愛生自身が直接保険金を受け取らなくても、共犯としての責任が問われる可能性があります。
柚留木が保険証を偽造しようとしていたことについて
洸人が病院にも連れていけないと訴えると、柚留木は偽造保険証を用意すると話しました。
この行為には、いくつかの法的な問題があります。
保険証の偽造に関する法的問題
保険証は、公的な機関が発行する公式な書類で、公文書とされています。
そのため、保険証を偽造することは、以下のような犯罪に該当する可能性があります。
- 有印公文書偽造罪(刑法第155条): 公務員や公的機関が作成する文書を偽造する行為は、この罪に当たります。保険証は公文書なので、その偽造はこの罪に該当します。この罪の罰則は、1年以上10年以下の懲役です。
- 偽造公文書行使罪(刑法第158条): 偽造した公文書を実際に使う行為は、この罪に当たります。例えば、偽造した保険証を身分証明として提示することがこれに該当します。この罪の罰則も、1年以上10年以下の懲役です。
関連する他の犯罪
保険証の偽造に関連して、以下のような犯罪が成立する可能性もあります。
- 詐欺罪(刑法第246条): 偽造した保険証を使って不正に利益を得た場合、詐欺罪に問われることがあります。例えば、偽造した保険証で医療サービスを受ける行為などが該当します。この罪の罰則は、10年以下の懲役です。
取り調べ中に「自分が息子を殺した」と虚偽の供述をした場合の法的問題
愛生は、取り調べ中に、息子の愁人が実際には生きているにもかかわらず、「自分が息子を殺した」と虚偽の供述をしました。
虚偽の供述について、法的には以下の責任が生じるようです。
虚偽供述刑法第172条(虚偽告訴罪)
- 成立条件: 他者に犯罪の疑いをかける目的で虚偽の事実を申し立てた場合に成立。
- 適用可能性: 愛生が自分自身を罪に陥れる形で「殺人」を供述している場合、自分を告訴する意図があるとみなされれば、虚偽告訴罪に該当する可能性があります。
- 罰則: 3か月以上10年以下の懲役。
公務執行妨害罪(刑法第95条)
- 成立条件: 警察や捜査機関が行う業務を妨害する行為。
- 適用可能性: 捜査機関に対し嘘の供述を行い、捜査リソースを無駄に費やさせた場合、公務執行妨害罪が成立する可能性があります。
- 罰則: 3年以下の懲役または50万円以下の罰金。
偽計業務妨害罪(刑法第233条)
- 成立条件: 虚偽の供述によって捜査や関係者の業務を妨害した場合。
- 適用可能性: 愛生の虚偽供述によって捜査が無意味に長引いたり、捜査方針が誤った方向に進んだ場合、この罪に問われる可能性があります。
- 罰則: 3年以下の懲役または50万円以下の罰金。
刑法第38条(故意の有無の確認)
- 虚偽の供述が愛生の精神状態や取り調べ時の心理的圧力によるものだった場合、故意性が認定されず、罪に問われない可能性があります。例えば、自身を守るために嘘をついた場合と、捜査を混乱させる目的で嘘をついた場合では、評価が異なります。
供述の後に与える影響
愛生が虚偽供述を行った後、事実が判明して息子が生存していることが明らかになった場合、以下の影響が考えられます。
- 捜査に費やされた時間やコストに対する責任。
- 嘘をついた動機が「自分を守るため」か「捜査を意図的に妨害するため」かで、罪の重さが変わる可能性。
まとめ
ドラマ『ライオンの隠れ家』の中で愛生が計画した、偽装死や虚偽供述は、法律上の問題になる可能性があります。
1.偽装死自体は犯罪ではないが、関連して保険金詐欺や虚偽の死亡届提出などがあれば重大な罪に問われる可能性があります。
ただし、愛生は生きていることが判明し、愁人の死亡も夫の祥吾は信じていないため、死亡届は出されないでしょう。
2.保険証の偽造は、公文書偽造罪や詐欺罪に該当する犯罪行為で、重い刑罰が科されます。
ライオンが病気になっても、保険証を使用せず、現金で治療してもらった方がよさそうですね。
病気にならす、元気なライオンでいてほしいですが!
3.虚偽供述により、捜査機関の業務を妨害したり、捜査の方向性を誤らせた場合、公務執行妨害罪や偽計業務妨害罪に問われる可能性があります。
その点では、捜査がはじまる前に、ライオンが生きていることが判明してしまう方が、愛生のためには良いのかもしれません。
愛生の偽装死の計画は、法的にリスクが高いものであることが判明しました。
「こうするしかなかった」とゆるぎは言う通り、それらを覚悟した上で、必死の思いで愛生は行動に移したのでしょう。
法律をおかさずともいい環境に早く落ち着くといいですね!
参考にしたサイト
- 刑法第155条 有印公文書偽造罪 – Wikibooks
公文書偽造罪についての法的解説。
参照元 - 刑法第158条 偽造公文書行使罪 – Wikibooks
偽造公文書行使罪に関する詳細な説明。
参照元 - 詐欺罪に関する解説 – Kawasaki Law Office
詐欺罪の具体例や刑罰についての解説。
参照元 - 公正証書原本不実記載罪 – Legal Expert
虚偽の死亡届や関連する法的リスクについての情報。
参照元 - 保険証の使用に関連する犯罪 – Wikipedia
保険証や公文書の偽造に関する全般的な情報。
参照元
これらのサイトを参考に、愛生の偽装死がどのように法的に扱われるかを調べました。
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